『斬魔大聖デモンベイン』私註 1


・原則として、作品名は『』、引用部分は《》で示した。
・H.P.ラヴクラフトの作品は、特に注記のない場合は創元推理文庫『ラヴクラフト全集』内のタイトルを記してある。ただしThe Dunwich Horrorは、『ダニッチの怪』ではなく『ダンウィッチの怪』とした。

目 次
デモムービー〜オープニング
第1話 I AM PROVIDENCE
第2話 THE OMEN
第3話 TAKE ME HIGHER
第4話 CHILD'S PLAY
第5話 I, ROBOT
第6話 THE INVADERS
第7話 THE SHADOW OVER INSMOUTH
第8話 THE THNG THAT WALKED ON THE WIND
第9話〜(別ファイル)
参考文献
付・体験版におけるレムリア・インパクト
付2・ジャバウォッキー


デモムービー

That is not dead which can eternal lie
And with strange aeons even death may die.
 
 H.P.ラヴクラフトThe Nameless City(『無名都市』)に登場する二行聯句。アラブの狂える詩人アブドゥル・アルハザードによるものとされる。後に『クトゥルフの呼び声』において、『ネクロノミコン』の一節としての地位を得る。
 「久遠に臥したるもの死することなく/怪異なる永劫の内には死すら終焉を迎えん」は波津博明訳『廃都』(『真ク・リトル・リトル神話大系1』国書刊行会)。

Nor is it to be thought that man is either the oldest or the last of earth's masters......  
 「人間こそ最古あるいは最後の地球の支配者なりと思うべからず……」(大瀧啓裕訳)。H.P.ラヴクラフトThe Dunwich Horror(『ダンウィッチの怪』)に登場する語句。ウィルバー・ウェイトリィが閲覧する『ネクロノミコン』の一節。ウィルバーが閲覧していたのはラテン語版だが、背後で見ていたヘンリー・アーミティッジが頭の中で英訳した。

斬魔大聖デモンベイン DEUS MACHINA DEMONBANE  
 漢字四文字とカタカナで構成される、由緒正しいロボットアニメ風のタイトル。ロボットアニメで最初にこのパターン(漢字四文字とカタカナのロボット名)を用いたのは『大空魔竜ガイキング』('76)か。なお、最も類似したタイトルを挙げるなら『破邪大星ダンガイオー』だろう。
 「大聖」といえば『西遊記』の斉天大聖のような称号、あるいはインドの「マハトマ」の訳語が想起される。

DEUS MACHINA  
 デウス・マキナ。ラテン語「機械の神」か。ゲーム本篇では「鬼械神」の語があてられる。

DEMONBANE  
 直訳すると「魔の破滅」。たとえばNethackには同名の、DEMONに大して特に威力を発揮する剣がある(JNethackでは「デーモンベーン」)。本篇で「魔を断つ剣」と称されるのはそのあたりをふまえてかもしれない。ちなみに、「〜BANE」で「〜」に対し特に效果のある武装ないし魔法を指すのは、ファンタジーRPGにおける名付けの法則。

プロローグ

果て知らぬ永劫ののちには、死もまた死ぬる宿(さだ)めなれば  
 宇野利泰訳『クトゥルフの呼び声』(『ラヴクラフト全集2』創元推理文庫)では、アルハザードの二行聯句の後半「And with strange aeons even death may die」は「果て知らぬ永劫ののちには、死もまた死ぬる定めなれば」と訳されている。


リベル・レギス Liber Legis  
 二十世紀最後の魔術師として名高い英国人、アレイスター・クロウリーの著書『法の書』The Book of the Lawのラテン語題Liber AL vel Legisから。クロウリーのテレマ主義(テレマ教、セレマ哲学)の中核をなす書物。
 赤と黒の機体は、同書の《the Book of the Law shall be printed beautifully in red ink and black upon beautiful paper made by hand》(III,39)との記述を受けてか。

ン・カイ N'kai
 ン・カイはH.P.ラヴクラフト『闇に囁くもの』、ラヴクラフト&H.ヒールド『墳墓』などに登場する架空の地名。「ン・カイの闇」とあるのは、かの地が光のない闇黒世界と形容されるのを受けてか。

オープニング

730  
 H.P.ラヴクラフト『ネクロノミコンの歴史』によれば、アブドゥル・アルハザードは西暦730年に『ネクロノミコン』(この場合は原著『アル・アジフ』を指す)を執筆した。

DEUS EX MACHINA  
 デウス・エクス・マキナ。通常「機械仕掛けの神」と訳されるラテン語。もともとはギリシャ劇で、作者が急場しのぎに出して強引な解決をつける宙乗りの神に用いられた語。転じて、劇・小説では、不自然で強引な解決をもたらすキャラクター。また、強引な急場しのぎの解決策。力ずくで解決を付ける存在たる巨大ロボットに対して、この語を用いるのは、ふさわしいことといえる。
 「デウス」の呼び名を持つ巨大ロボットには、『THEビッグオー』の「メガデウス」がある。ビッグオーの主人公、交渉人ロジャー・スミスは、交渉の強引な解決策として、しばしばメガデウスを用いる。

第1話 I AM PROVIDENCE

I AM PROVIDENCE  
 The H.P. Lovecraft ArchiveFAQによれば、H.P.ラヴクラフトの書翰(J.F.モートン宛、1926年)にある言葉で、この作家の墓碑銘となった。プロヴィデンスはロードアイランド州にある彼の故郷。

大十字九郎 Daijuhji Kuro  
 ゲームをクリアしてから、「スタッフ後記」をクリックしてください。

僕はもう疲れたよ……  
 アニメ版『フランダースの犬』(旧)の最終回において、主人公ネロは死の間際に疲労と眠気を訴える。以下、ルーベンスの二枚の絵、「ブービエ・デ・フランダースの犬そりに乗せられ……」も概ね同シーン。橇ではなく荷車だったような気もするが、未確認。

エンディングテーマ  
 ここで流れている曲は、『Hello,wolrd』のエンディング曲「BLAZE UP」の、サントラ収録のinst版。「燃えあがれ、悲しみ焼き尽くせ」は「BLAZE UP」の歌詞。

ブラックロッジ Black Lodge  
 アレイスター・クロウリーの小説『ムーンチャイルド』(創元推理文庫、絶版。The Libri of Aleister Crowleyで原文を読むことができる)には「ブラック・ロッジ」という悪の黒魔術結社が登場する。

アーカムシティ Arkham City  
 アーカムはラヴクラフトの作品にしばしば登場する架空の街で、マサチューセッツ州の古都。初の言及は『家のなかの絵』。『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』において初めて舞台となる。他の作品の舞台となるインスマウス、ダンウィッチもアーカムに近い。
 「アーカムシティ」という呼び名と1930年代アメリカ都市風のヴィジュアルは、『バットマン』の「ゴッサムシティ」を思わせる。なお、ロボットアニメでは『THEビッグオー』の「パラダイム・シティ」に似た景観である。

ウィンフィールド Winfield  
 ラヴクラフトの父親の名からか。

つまりは覇道財閥こそ、この街の実質的な支配者といって過言ではない  
 覇道財閥とアーカム・シティの設定は、『勇者特急マイトガイン』の旋風寺財閥とヌーベル・トキオ・シティを思わせなくもない。因みに『マイトガイン』の主人公は、両親をテロで失い、15歳の若さで当主の座についている。

完璧超人  
 ゆでたまご『キン肉マン』に登場する超人。なお、原作では「パーフェクトちょうじん」と読むが、アニメでは「かんぺきちょうじん」と読まれてしまい、原作ファンは枕を濡らしたものである。今回もまた。

生まれてきてすみません  
 太宰治『二十世紀旗手』。正確には「生れて、すみません」。

魔導書 grimoires  
 グリモア。グリモワールとも。一般的には「魔道書」「魔術書」「魔術教書」等の語があてられる。「魔導」はおそらく「魔道」の誤記から広まった語で、マンガ・ゲーム・ライトノベル等でのみ用いられる。
 魔術の指南書。主に中世の黒魔術の教典を指すが、近代以降についても、魔術結社「黄金の夜明け」団やアレイスター・クロウリーの魔術書についても用いられる語。
その内容は、主として、魔術のさまざまな儀式、とりわけ魔物の召喚と使役である。たとえばソロモンの名を冠したグリモアは、旧約聖書のソロモン王がデーモンを呼び出し使役した、その方法を伝えるものと称する。
 グリモア一般については、ローズマリ・エレン・グィリー『魔女と魔術の事典』(青土社)の「魔術教書」の項のほか、「オカルトの部屋」のグリモワールの説明を参考。
 ラヴクラフト及びクトゥルー神話作品にはさまざまな実在・架空の書物が登場し、大きな役割を果たす。

ミスカトニック大学 Miskatonic University  
 H.P.ラヴクラフトの諸作において、マサチューセッツ州アーカムに存在するとされる大学。付属図書館には『ネクロノミコン』をはじめとする数々の魔道書が収蔵されているという。早くは『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』に医学部が登場するが、この大学の印象を決定付けたのは『ダンウィッチの怪』における、ウィルバー・ウェイトリイのラテン語版『ネクロノミコン』閲覧であろう。

記録上の専攻は考古学  
 ブライアン・ラムレイ『妖蛆の秘密』(創元推理文庫『タイタス・クロウの事件簿』)に、主人公タイタス・クロウが、趣味を問われ、実際はオカルトであるにも関わらずそれを考古学と偽るシーンがある。

治安警察  
 ロボットアニメではお約束の、無力な警察。ネスとストーンは『勇者特急マイトガイン』の小沢昭一郎警部や、『THEビッグオー』の軍警察のダストン少佐のような役割か。

マスターテリオン The Master Therion
 二十世紀の魔術師アレイスター・クロウリーのペンネーム。たとえば『魔術−理論と実践』はこの名義で書かれている。therionはギリシャ語で「獣」で、ヨハネ黙示録の666の獣を意図した。
 クロウリーは自身を反キリストの獣と信じ、好んで「The Beast 666」や「TO MEGA THERION」(大いなる獣)と署名したという(『魔女と魔術の事典』「666」の項。ローズマリ・エレン・グィリー、青土社)。  O∴H∴西洋魔術博物館によれば、クロウリーの一時期の魔術名でもある。

アーミティッジの爺さん Armitage  
 ラヴクラフト『ダンウィッチの怪』には、ヘンリー・アーミティッジという年老いたミスカトニック大学図書館長が登場する。

エノクの書 Book of Enoch  
 旧約聖書偽典に「エノク書」(数多くの天使が登場することで有名)があるが、ここではジョン・ディー博士による『ロガエスの書』(『神の言葉の書』。多数の魔方陣と暗号からなる。天使語たるエノク語で記されている)の別名か。

ソロモンの大いなる鍵 Key of Solomon
ソロモンの小さい鍵(レメゲトン)  Lesser Key of Solomon;Lemegeton
大いなる教書(グラン・グリモア)  Grand Grimoire
黒い雌鳥 The Black Pullet  
 いずれも実在の、中世黒魔術のグリモア。ちなみに水木しげる『悪魔くん』などで有名な「エロイム、エッサイム……」という呪文は『黒い雌鳥』に記されている。
 このシーンでは、下の『ドジアンの書』を含め、クトゥルー神話オリジナルの書物はみられない。

ドジアンの書 Book of Dzyan  
 「ジャンの書」とも。神智学の創設者マダム・ブラヴァツキーが、彼女の『シークレット・ドクトリン』の典拠として存在を主張する書物。忘れられたセンザル語でアトランティスにおいて書かれたと称する。
 ウィリアム・エンメッテ・コールマンによれば、『シークレット・ドクトリン』中の『ドジアンの書』からの引用は、『リグ・ヴェーダ』に典拠を求めることができる。(ライアン・スプレイグ・ディ・キャンプ『プラトンのアトランティス』角川春樹事務所ボーダーランド文庫)。
 H.P.ラヴクラフト『闇をさまようもの』において、フェデラル・ヒルの廃教会にあるという数々の忌まわしい書物と共に名が挙げられる。

死霊秘法 Necronomicon  
 ネクロノミコン。クトゥルー神話における最重要の書物。
 「ネクロノミコン」はギリシャ語で「死者の掟の表象」の意。「死霊秘法」の訳語は大西尹明によるものか。
 創元推理文庫『ラヴクラフト全集5』解説に収録のラヴクラフトの書翰によれば、ネクロノミコンという名は、
《夢のなかで思いつきましたが、語源は完全に正しいものです。アラブ人の著者をギリシア語の表題をもつ書物にあてがうにあたって、わたしは気まぐれに状況を逆転させ、ギリシアのプトレマイオスの普及の天文学の著作が一般にアラビア語の表題『アルマゲスト』(正確には『タブリル・アル・マゲスティ』として知られている事実を利用しています》。

ドラムマガジンのマシンガン  
 これについては、2chスレ「ニトロプラス 28」の288テケリ・リ氏作成による、「デモンベインに登場することばに関する覚書」日本語版 の「ThompsonM1921トンプソンM1921(シカゴタイプライター)」の項より以下に引用する。
《米軍のトンプソン退役将軍が起こした会社が開発した為、トンプソンと呼ばれる第二時世界大戦時のアメリカ軍の主力短機関銃。有名なコルトM1911(ガバメント)とおなじ45ACP弾を使用する優秀な短機関銃ではあったが、ブラックロッジの戦闘員が所持していたフォアグリップとドラムマガジン付きで、銃身に放熱フィンのあるM1921はおもにアル・カポネで有名なシカゴのギャングの抗争に使用されたため、その発砲音からシカゴタイプライターと呼ばれた。》

ドクター・ウェスト Dr.West  
 ネーミングはH.P.ラヴクラフト『死体蘇生者ハーヴァート・ウェスト』からか。その言動からアレイスター・クロウリー『ムーンチャイルド』のアースウェイトという説あり。2chスレ「ニトロプラス 27」の34参照。

モアベター more better  
 小森のおばちゃまの口癖。

ギターケースに丸い穴が開く。そこから発射されるロケット弾  
 映画『デスペラード』にそっくりなシーンがある。「まんまパクリかよ!」

こんなとき、俺が組織最強の殺し屋でケダモノだったら。  
 ニトロプラスの処女作『Phantom』は、平凡な日本人の少年がアメリカの犯罪組織「インフェルノ」最強の殺し屋に仕立て上げられる物語。境遇の変化に悩む主人公に、とある人物が「ケダモノになりなさい」と励ますシーンがある。

アル・アジフ Al Azif  
 H.P.ラヴクラフト『ネクロノミコンの歴史』によれば、『ネクロノミコン』の原題。《アジフは魔物の吠え声として考えられた夜の音(昆虫の鳴き声)を示すために用いられた。》
 また、H.O.フィッシャー宛書翰には、《わたしは苦労して、ビザンティウムで翻訳された『ネクロノミコン』について、老アブドゥルのオリジナル版の正真正銘の書名を見つけだしました。『アル・アジフ』がそれです。この言葉は『ヴァテック』に付されたヘンリーの博識な註のなかに見つけました。孫引きですが、わたしは正確にこの言葉を使っています。》とある。
 以上引用はすべて創元推理文庫『ラヴクラフト全集5』。
 なお、The Dan Clore Necronomicon Pageによれば、ヘンリーの註には確かにその通りに書いてあるが、実際のアラビア語にはazifの語は確認できない、とのこと。

アブドゥル・アルハザード Abdul Alhazred  
 アラブの狂える詩人。H.P.ラヴクラフト『無名都市』に、謎めいた二行聯句「そは永久に横たわる死者にあらねど/測り知れざる永劫のもとに死を超ゆるもの(That is not dead which can eternal lie/And with strange aeons even death may die.)」の作者として初めて名が上がる。のちに『魔犬』において、『ネクロノミコン』の作者として同定された。
 《アブドゥル・アルハザードという名前は、わたしが『アラビアン・ナイト』を読んでアラブ人になりたくてたまらなかった五歳のときに、誰かおとなの人が(誰だったか思い出せません)わたしのためにつくりだしてくれたものです。何年か後に、禁断の書物の著者の名前として使えばおもしろいだろうなと思いました。》(H.O.フィッシャー宛書翰、大瀧啓裕訳、創元推理文庫『ラヴクラフト全集5』解説より)。

久遠に伏したるもの死することなく…… That is not dead which can eternal lie...
 「That is not dead〜」の項を参照。
 また、この二行聯句は、「『ネクロノミコン』断章」(『魔道書ネクロノミコン』学研)においては、『アル・アジフ』の扉を飾るエプグラフとなっている。契約のシーンでこのフレーズが登場するのはそのためか。

メフィストフィレスだってもう少しマトモな契約を交わすわっ
 メフィストフェレスは、中世のファウスト伝説に多く名の見られる悪魔(堕天使)。ルシフェルの別名とも言われる。ファウスト伝説は多くの作家が取り上げ作品化したが、とくにゲーテの『ファウスト』が有名。ファウスト博士はこの悪魔と契約し(もちろん双方の同意に基いて)、将来において自らの魂を引き渡すことと引き換えに、あらゆる望みを叶えたという。

ネスとストーン  
 映画『アンタッチャブル』の登場人物名から。

これが若さか  
 『機動戦士Zガンダム』第13話における、クワトロ・バジーナの科白。

スーパーウェスト無敵ロボ28號スペシャル  
 「無敵ロボ」といえば『無敵ロボ トライダーG7』、「28號」といえば、何度も映像化された横山光輝『鉄人28号』だろう。

敵前逃亡は士道不覚悟で切腹  
 新撰組局中法度に曰く、「一、士道ニ背キ間敷事」、「右条々相背候者切腹申付ベク候也」。
 ただ、「敵前逃亡は〜」というセリフ自体は、和月伸宏のマンガ『るろうに剣心』(集英社)、あるいはライアーソフト『行殺新撰組』か。

アイオーン Aeon
 ギリシャ語で「永劫」の意。

メタトロン Metatron  
 旧約聖書偽典「エノク書」等に名の見える天使。キリスト教よりはユダヤ、特に神秘思想カバラにおいて、最も偉大なる天使の王。また、カバリストによれば、「明るい天使」。

サンダルフォン Sandalphon  
 旧約聖書偽典「エノク書」等に名の見える天使。カバリストによれば、メタトロンと対をなす「暗い天使」。メタトロンと同一視されることもあり、また(双子の)兄弟とされることもある。
 なお、このゲームのサンダルフォンというキャラについて言えば、打倒メタトロンを唯一の存在目的とする、という点において、言うまでもなく『人造人間キカイダー』のハカイダーへのオマージュであろう。

綻ッ!  
 板垣恵介『グラップラー刃牙』の秋田書店コミックス22巻に登場する擬音からか。

天地上下に構える  
 「天地上下の構え」。実在する空手の型だが、有名になったのは、梶原一騎・影丸譲也による後期『空手バカ一代』のためだろう。大山倍達の代名詞ともいえる構え(『空手バカ一代』では添野義二等も用いるが)で、通例、左手を天(上)に、右手を地(下)に構え、体は正面を向く。

魔物の咆吼たる我  
 「アル・アジフ」の項を参照。

操縦桿  
 アルのコックピットはバイク状になっている。テックジャイアン5月号のインタビューによれば、原画のNiθ氏の最も好きなメカは「ガーランド」(『メガゾーン23』に登場する、バイクからロボットへ変形するメカ)であるという。ちなみに『マジンガーZ』の操縦ユニット、ホバー・パイルダーにもバイクのハンドルのような操縦桿がついている。
 九郎側は、どうやらパイロットの動きがそのまま伝達される操縦系になっているらしい。この方式は特撮『ジャンボーグA』がはしり。以降、『トップをねらえ!』『機動武闘伝説Gガンダム』等で踏襲された。なお、オープニング等のムービーでは、九郎の操縦席のセットアップは、『Gガンダム』のそれに類似した構図が採用されている。

総帥の椅子が、シャフトの中を高速で降っていく  
 『宇宙戦艦ヤマト』か。艦長室の椅子がそのままエレベーター式に下って、第一艦橋の艦長席になる。
 エレベーター降下中の着替え、及び「ここでは司令と」というシチュエーションは『勇者王ガオガイガー』第1話に見ることができたように記憶するが、未確認。

消えたのとは(ちゃ)います。虚数展開された物質は確率上の概念として、あらゆる空間に存在している状態でして
 コペンハーゲン解釈か。
……ほら、箱の中の猫と同じで
 シュレディンガーの猫。
「あのロボット、真逆、噂の……」  
 登場以前から主役ロボットが「噂」になっている、というシチュエーションは、『勇者特急マイトガイン』第1話にもみられる。

まったくの無傷かよ  
 ロボットアニメのお約束。爆煙に呑み込まれ、あわやと思わせたのも束の間、視界が晴れると、そこにはまったくの無傷の主役メカが悠然と立っている。こうしたシチュエーションのルーツはおそらく『宇宙戦艦ヤマト』に求めることができよう。ガミラスの巨大ミサイルの攻撃を受け、「溶けて蒸発してしまったのでは」というほどの爆煙の中から、無傷のヤマトが現れる。ちなみにバリヤーなど用いず、表面装甲でのみ持ち堪えるのが漢である。
 古くからあってもおかしくないシチュエーションだが、具体的に思い当たるのは、強いていえば『機動戦士ガンダム』第1話か。ちなみに、上記ヤマトのシーンを下敷きにして、『トップをねらえ!』のガンバスターや、『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒の非常識な強さが描写された。
ロボット同士の一対一の対決というシチュエーション、並びにミサイル直撃の爆煙、という点で最も類似する例は、思い出せる範囲では、『勇者特急マイトガイン』のグレートマイトガインにあったように記憶するが、未確認。

レムリア Lemuria  
 オカルティストたちが、かつて太平洋上に存在したと夢想する幻の大陸。
 大陸移動説以前の地質学者たちは、地層的類似性に着目した結果、インド-マダガスカル間に地峡が存在した時期を想定した。これはジュラ紀までのものとされたが、ドイツの動物学者E.H.ヘッケルは、キツネザル(レムール)の分布を説明するため、新生代まで存在したと想定した。イギリスのF.L.スクレーターがこれを支持し、「レムリア」の名を提案。また、ヘッケルはレムリアを人類発祥の地であると言い出した。
 インド洋のレムリアを太平洋に移動させたのは、神智学の創設者マダム・ブラヴァツキーである。以後、数々の大物オカルティストたちが、レムリアを舞台とする数々の物語を生み出した。
 後に、チャーチワードが同じ位置にムー大陸の存在を主張したため、ムーとレムリアの区別は現代では曖昧である。ちなみにチャーチワード以前には、ムーは大西洋のアトランティスの別称と考えられていた(以上すべてライアン・スプレイグ・ディ・キャンプ『プラトンのアトランティス』による)。
 なお、H.P.ラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』には、イギリスの神智学者W.スコット-エリオットによる実在の書物『アトランティスと失われたレムリア』への言及がある。

ヒラニプラ Hiranipra  
 チャーチワードによれば、ムーの首都の名。なお、「ヒラニプラ」という名称自体は、中央アジアの地底王国アガルタや伝説のシャンバラの首都としても目にするが、出典は不明。
ナアカル Naacal  
 チャーチワードによれば、ナアカルとはムーの宣教師。また、かれらが用いた特殊な語。
 ヒラニプラ、ナアカルについてはジェームズ・チャーチワード『失われたムー大陸』『ムー帝国の表象』(角川春樹事務所ボーダーランド文庫)を参考にした。
 H.P.ラヴクラフト&E.H.プライス『銀の鍵の門を越えて』、H.P.ラヴクラフト&H.ヒールド『永劫より』に、ナアカル語についての言及がある。

レムリア・インパクト Lemuria Impact  
 巨大ロボットの必殺技に承認が必要なのは『勇者王ガオガイガー』のゴルディオンハンマー。
 光背を背負ったのち突進、敵に掌を押し当て、タイムラグの後に相手が爆散する、という一連の流れは『機動武闘伝説Gガンダム』の爆熱ゴッドフィンガー〜「ヒート・エンド!」が最も近いと思われる(なお、爆熱ゴッドフィンガーには、掌から火炎のようなものを発する別のタイプもある)。
 ほかに光背状のヴィジュアルを持つ必殺技としては、『戦国魔神ゴーショーグン』のゴーフラッシャーがあるが、とくに関係はないだろう。
 シナリオ担当の鋼屋ジン氏のサイトの掲示板における同氏の発言(4/28)によれば、「実はシャイニングフィンガーじゃなくて、螺螺螺・螺旋。いや、狂おしくどうでも良い話ですが。」。「螺旋」は山口貴由『覚悟のススメ』(秋田書店)に登場する架空の武術の技で、掌から波動を流し込み敵の体を膨張破裂せしめる絶技。

忌まわしきフルートが奏でる whine of accursed flutes;the sound of thin accursed flutes  
 H.P.ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて』の、「単調な、忌まわしきフルートの調べ(monotonous whine of accursed flutes)」か。魔王アザトースの混沌の玉座の周囲で奏でられる。ほか『魔女の家の夢』『闇をさまようもの』等にも同様の描写がみられる。

第2話 THE OMEN

THE OMEN
 映画『オーメン』から。6月6日6時に生まれ、頭に「666」と読める痣を持つ子供ダミアンを巡るホラー。獣の数字666、また「反キリスト」は人間の姿をとる、等の知識を広めた。ちなみに「オーメン」は「凶兆」の意。

トイ・リアニメーターToy Reanimator  
 H.P.ラヴクラフトHerbert West:Reanimator(『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』)から。「トイ〜」となるのは、小林泰三『玩具修理者』を意識してか。

了解(ヤー) ja
 ドイツ語ja(ヤー)は英語のyesに相当。ドイツ(式)の軍隊での「了解」。

衰えることなく燃え盛る聖火の中に時折、何か異形の存在の影を垣間見るのは……
 ラヴクラフト&ダーレス『アルハザードのランプ』(『クトゥルー10』青心社文庫)からか。ランプの炎が異界の光景を浮かび上がらせる。

僧院 abbey  
 マスターテリオンことアレイスター・クロウリーは、ラブレーの『ガルガンチュワ』に登場する「テレームの僧院」にちなんで、シシリー島に「テレマ(セレマ)僧院」を建設したことがある。

 
夢幻心母 DREAM HEART MOTHER  
 不明。ピンク・フロイドのアルバムATOM HEART MOTHERの邦題「原子心母」からか。

アウグストゥス Augustus  
 ローマ帝国初代皇帝オクタウィアヌス(前63〜14、在位は27〜14)。「アウグストゥス」はローマ百年の内乱を終結させたかれに元老院から贈られた称号で、「尊厳なる者」の意。この称号を持つのはかれだけではないが、ふつうアウグストゥスといえばこのオクタウィアヌスを指す。また、H.P.ラヴクラフトの弟子オーガスト・ダーレスの名「オーガスト」は「アウグストゥス」の英語読み。

ティンダロスの猟犬 Hound of Tindalos  
 F.B.ロング『ティンダロスの猟犬』(『クトゥルー5』青心社文庫)に登場する、犬に似た怪物。一度獲物に目を付けると、時間と空間を越えてどこまでも追跡するという。

幼稚園のバスをジャックして採石場で大暴れ  
東映の特撮ヒーロー物において、悪の組織は幼稚園のバスをジャックすることが多い。これは、バスが小型であるため、ロケバスを転用できることによる。また、ヒーローと怪人の本格的な戦闘のシーンは、爆薬を使用するため。採石場で撮影が行われることが多い。

背教者デュッコ・シュレーカーの書いた悪魔の教典 BOOK OF DEVIL PRAYER  
 《(……)あれが悪魔の聖書とでもいったものでしょうか……これこそ世界中にタッタ一冊しかないと噂に聞いたシュレーカーのBOOK OF DEVIL PRAYER(外道祈祷書)かと思うと(あっし)は気が遠くなって、真夏の日中にガタガタ震え出したものでげす。
 ヘエ……先生はソンナ書物(ほん)の事をお聞きにならない。ヘエ。そうですか。著者の名前はたしかデュッコ・シュレーカーと読むんだろうと思いましたがね。むずかしい綴りの名前でしたっけが……何でも百年ばかり前の事だそうですがね。有名な英国のロスチャイルドってえ億万長者の二男でしたか三男でしたかが十万ポンドの懸賞付きで探したことがあるってえ(……)》(夢野久作『悪魔祈祷書』)。

かのCRCが授けられた秘教の書 Book of M  
 「CRC」は、薔薇十字団の創設者クリスチャン・ローゼンクロイツ。ここで言われているのは、CRCが中東で授けられたという『Mの書』だろう。なお、この書についても、またCRC自身、実在のほどは不明。

そもそも、妾が執筆された頃は既に貨幣の概念は存在していた  
 貨幣の誕生は紀元前8世紀の小アジア。『アル・アジフ』成立は8世紀のダマスカス。

生命の樹 Tree of Life  
 神秘思想カバラにおける象徴図形「セフィロトの樹」。10の(セフィラ)と、その間をつなぐ22の(パス)からなる。セフィロトはセフィラの複数形。ちなみにそれぞれのセフィラを守護する天使がいて、頂点ケテル(王冠)はメタトロン、最下部マルクト(王国)はサンダルフォン(メタトロンとも)である。この図形は宇宙そのものを象徴し、たとえば最下部マルクトは地上の王国、われわれの五感で感知しうる物質的世界にあたる。

「王冠=世界」 Kether=The World  
 「王冠」はセフィロトの樹の最上部、「世界」はタロットの大アルカナの一枚。以下、「叡智=吊るされた男」「理解=塔」……「王国=審判」まで、左項は生命の樹を順々に下り、右項はタロットの大アルカナ。このシーンでナイアが行っている占いでの、タロットの順番の意味ないし典拠は不明。
タロットは古くから知られていたが、魔術及びとカバラとの関係は比較的新しい。19世紀にエリファス・レヴィが『高等魔術の教理と祭儀』においてカバラにタロットを取り入れて以来のものである。のちに「黄金の夜明け」団もそれに倣い、現在流通するのタロットの種類の多くが「黄金の夜明け」団によるものである。『「黄金の夜明け」魔術全書』(国書刊行会)に詳しい。またA.クロウリーも独自のタロット論を『トートの書』に著した。なお、タロットカードとセフィロトの樹の対応については多くの議論があるが、通例、大アルカナ22枚はく22の(パス)に配置される。このシーンのように各セフィラと対応させる例は珍しいといえる。

狂々と くるくると  
 たとえば和月伸宏『るろうに剣心』において使用例が見られる当て字。やはり不吉な運命の輪が回り始めるシーンで用いられた。

レザーフェイス  
 映画『悪魔のいけにえ』シリーズに登場する殺人鬼。人間の皮で作ったマスクをかぶっている。

コリン Colin
 イギリス生まれの批評家コリン・ウィルソン(評論『アウトサイダー』の著者)。『ロイガーの復活』(創元推理文庫)等のクトゥルー神話作品があるほか、『魔道書ネクロノミコン』(学研)に長大な序文を寄せている。

七頭十角の獣   
 ヨハネ黙示録に登場する反キリストの獣。第13章《わたしはまた、一匹の獣が海の中から上って来るのを見た。これには十本の角と七つの頭があった。それらの角には十の王冠があり、頭には神を冒涜するさまざまの名が記されていた。》

デモンベインのコメカミ、お約束のようにバルカン砲が
 『機動戦士ガンダム』第1話で、ロボットの操縦に馴れぬ主人公が最初に探り当てる武器がロボット頭部のバルカン砲である。

ナコト写本 Pnakotic Manuscripts
 H.P.ラヴクラフトによる架空の魔道書で、『北極星』(『定本ラヴクラフト全集1』国書刊行会)、『蕃神』といった比較的初期の作品で既に名が見える。ちなみに「写本」でありながら人類最古であるのは、原本が人類以前の存在であるため。また、『闇に囁くもの』によれば、ン・カイについての記述があるといい、これがリベル・レギスの「ン・カイの闇」のもととなっていると見られる。

エセルドレーダ Etheldreda
 アレイスター・クロウリーの愛犬の名。The Confessions of Aleister Crowley(『アレイスター・クロウリーの告白』、本邦未訳)のchapter 22には次のように書かれている。
 《I took Lady Etheldreda to Scotland with me. I have had many dogs in my time; but she was sui generis. I had trained her to follow me on the mountains and she was not only an admirable rock climber but an uncannily prophetic tracker. For instance, I would leave her at the foot of a precipice beyond her powers and, after a climb, descend another precipice to another valley, often in mists so thick that I could not see ten years in any direction. But I would invariably find her at the foot of the rocks after making a detour of perhaps ten miles across unknown country.》

ABRAHADABRA
 アレイスター・クロウリーによれば、有名な呪文アブラカダブラABRACADABRAは正しくはABRAHADABRAだという(ローズマリ・エレン・グィリー『魔女と魔術の事典』青土社)。またクロウリーの『法の書』に、《And Abrahadabra. It shall be his(=The Beast's──今木註) child & that strangely. Let him not seek after this; for thereby alone can he fall from it.》(III.47)、《 The ending of the words is the Word Abrahadabra.》(III.75)。
 Corpus Stavishエッセイによると、G.DavidsonのDictionary of Angelsに、《Abrahadabra is translated by G. Davidson as “I bless the dead”, is one of the three Holy Names used when blessing a sword (Clavicus Solomonos?), Davidson also states that it is derived from the Hebrew “ha brachah dabarah” or “Speak the blessing”. It is used as an amulet to heal and ward off evil. When chanted, it is reduced letter by letter.》とあるという。
 古くからある似た言葉ABRACADABRAの意味・語源については諸説ある。その一つに、ヘブライ語で「雷石を投じ死に至らしめよ」(Abreq ad habra)があり、ここではそのニュアンスのようだ。
 なお、古橋秀之『ブライトライツ・ホーリーランド』(電撃文庫)に、「〈雷石を投じ死に至らしめよ(ABRACADABRA)〉!!」の声と共に左手から雷撃を放つシーン(269頁)がある。

字祷子(アザトース) Azathoth
 「アザトース」はH.P.ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて』等に登場する、「魔王」(daemon sultan) と称される謎めいた存在。また、『闇に囁くもの』では、《『ネクロノミコン』がアザトースという名前でもって慈悲深くも隠しこんだ、角度ある空間の彼方に存在するすさまじい核の混沌》と言及される。

ジョージ George
 『魔道書ネクロノミコン』(学研)の編者ジョージ・ヘイから。
アリスン Alison
 ジョージ・ヘイの娘アリスン・ヘイ。『魔道書ネクロノミコン』の献辞に名が見える。ジョージ、アリスン、コリンはいずれも同書ゆかりの人名からとられているのだろう。

第3話 TAKE ME HIGHER

TAKE ME HIGHER
 『ウルトラマンティガ』でV6の歌う主題化「TAKE ME HIGHER」。また『ティガ』50話『もっと高く! Take Me Higher』から続く最終展開では、甦った「邪神」ガタノゾーアとの戦いが描かれる。なお、ガタノゾーアGhatanothoaは、H.P.ラヴクラフト&H.ヒールド『永劫より』(『クトゥルー7』青心社文庫)に言及がある。

七つの頭
 ヨハネ黙示録第17章、《すると、天使がわたしにこう言った。「なぜ驚くのか。わたしは、この女の秘められた意味と、女を乗せた獣、七つの頭と十本の角がある獣の秘められた意味とを知らせよう。あなたが見た獣は以前はいたが、今はいない。やがて底なしの淵から上って来るが、ついには滅びてしまう。地上に住む者で、天地創造の時から命の書にその名が記されていない者たちは、以前いて今はいないこの獣が、やがて来るのを見て驚くであろう。ここに、知恵のある考えが必要である。七つの頭とは、この女が座っている七つの丘のことである。そして、ここに七人の王がいる。五人は既に倒れたが、一人は今王の位についている。他の一人は、まだ現れていないが、この王が現れても、位にとどまるのはごく短い期間だけである。以前いて、今はいない獣は、第八の者で、またそれは先の七人の中の一人なのだが、やがて滅びる。 》
 「七つの頭」とはローマ七つの丘、また、ローマ帝国歴代の皇帝、というのが歴史学者の定説。「ブラックロッジ」はこの説に従い、幹部に七代までのローマ皇帝の名をあてる。また「獣」は八代ドミティアヌス帝(ヨハネ黙示録が執筆されたと推定される時期の皇帝)で、大導師マスターテリオンがこれに対応する。

ウェスパシアヌス Vespasianus
 ローマ帝国皇帝ウェスパシアヌス(9〜79、位69〜79)。暴君ネロ没落後の内乱を制し、フラヴィウス朝を樹てた。叩き上げの軍人あがりで、苦労人。帝位についたときには60歳になっていたという。

アルって言うと男の名前になっちまうが
 男性名Albertの愛称はAlもしくはBertである。

ナイトゴーント night-gaunt
 夜鬼とも。H.P.ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて』に登場する、捻れた角と蝙蝠の翼をもつ、顔のない生物。

寂しがり屋の、宇宙の法則
 《万有引力とは/引き合う孤独の力である》。谷川俊太郎「二十億光年の孤独」。

死亡遊戯
 映画『死亡遊戯』。ブルース・リー最後の、死後に完成した映画。「ほぁちゃあああ――!」はリーの用いた気合。

銅のヤカン
 ラグビーで言うところの「魔法の水」。ケガや失神で倒れた選手に、ベンチから持ってきた黄銅(しんちゅう)のヤカンの水をかけると、プレーに復帰させることができるという。

黒助 "Nigger-Man"
 黒装束あるいは黒い肌の相手に用いる呼び名。H.P.ラヴクラフト『壁のなかの鼠』の黒猫は「黒すけ」("Nigger-Man")とも訳される、古橋秀之『ブラックロッド』(電撃文庫)でゼン・ランドーがブラックロッドを「くろすけ」と呼んだ、といったことは、特に関係はないだろう。

タイーホ
 逮捕。インターネット最大の匿名掲示板サイト「2ちゃんねる」で用いられる方言。

アトラック=ナチャ Atlach-Nacha
 C.A.スミス『七つの呪い』(『クトゥルー4』青心社文庫)に登場する蜘蛛型の怪物。

ヴーアミタドレス山
 古代ハイパーボリアの地名とされる。ハイパーボリア(ヒュペルボレオイ)は、ヘロドトス『歴史』などにも見える、古代ギリシアで信じられた北方の伝説の地。ただ、この山の名はスミスのオリジナルか。

三法印の一、諸行無常を今此処に体感し 
 「三法印」は仏教の世界観の根本をなす三つの考え方。『法句経』では「諸行無常」「一切皆苦」「諸法無我」の三つ。釈迦の初転法輪(最初の説法)において述べられたとされる。

ルルイエ R'lyeh
 H.P.ラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』『闇に囁くもの』等で言及される、海に沈んだ都市。邪神クトゥルーの眠る地である。『クトゥルフの呼び声』によれば、ニュージーランド沖、南緯47度9分、西経126度43分に位置する、歪んだ円柱の立ち並ぶ巨大な石造都市。

黄金に輝く黎明を征く権利を得よう!
 19世紀に発足した魔術結社「黄金の夜明け」団を意識したセリフか。

マギウス・ウィング!
 『デビルマン』の「デビル・ウィング!」を思い出させる。デビルウィングは空を飛ぶためのものだが、刃物にもなったと記憶する。のちに九郎は翼を出すときにこう叫ぶので、ますます思い出させるのであるが。

クモ怪人
 特撮『仮面ライダー』が最初に戦った相手が「蜘蛛男」であった。以降、仮面ライダーシリーズでは、最初の敵はクモの怪人であることが多い。ちなみに「クモ怪人」という名が見えるのは、『仮面ライダーBLACK』第1話である。
 マギウスに変身した主人公が初めて(正面きって)戦う相手が蜘蛛妖であるのは、この意味でふさわしいといえる。

そう頭も、だ。
 頭部にまでドリルのついたロボットとしては、『勇者特急マイトガイン』の「轟龍」がある。飛行機に変形した際にドリルは機首になった。「頭のドリルはやめてもらおう」「だから、ドリルは取れと言ったのだ」等の名言を生んだ。

スーパーウェスト無敵ロボ28號改ドリル・エディション〜男の夢よ永久に〜
 ここでいうドリルは現実に存在する穿孔用のそれではなく、歯医者に使われるような円錐型のドリルを漫画的に巨大化したもの。なぜドリルが男の夢でありロマンであるのかは不明。タカラがスポンサーに付くロボットアニメ・特撮には必ずドリルが登場するが、なんとなれば、玩具製作の型を使い回しているためである。そのため定番化し、作品ごとに種々の設定が変転しつつ、たとえば勇者シリーズのロボットは常にドリルと共にあった。『勇者王ガオガイガー』で、最新型の新幹線とステルス戦闘機(?)に肩を並べ、不恰好で理不尽きわまる「ドリルガオー」なる謎のメカが主役メカの合体パーツとなったのは、伊藤明弘による絶妙のパロディマンガ(大都社『ブルーゲイル 伊藤明弘版権物作品集』所収)と共に記憶に新しい。また特撮においては、映画『海底軍艦』『惑星大戦争』の万能戦艦「轟天」が先端部のドリルを最終兵器とした歴史がある。ちなみに押川春浪の原作『海底軍艦』でもドリル(三尖衝角)はあると聞くが、未確認。
 おそらくは、現実とはかけはなれた設定と、視覚的なわかりやすさの絶妙な配合が、ドリルを夢ともロマンとも称させるのだろう。

ドリル・トルネード・クラッシャー
 こうしたドリルを用いた攻撃は、おそらく『ゲッターロボ』のゲッター2の右手のドリルに端を発する。ただ、ゲッター2には必殺技「ドリル・ロック」(石川賢『ゲッターロボ』)があるが、これはドリルを飛ばすものであり、やや様相は異なる。
 類似の技としては、『勇者特急マイトガイン』のマイトカイザーが右手に装着したドリルで行う「ドリルクラッシャー」を挙げることができる。

アエテュル Aethyrs
 エーテルとも。主にジョン・ディー博士と霊媒ケリーによる「エノク的魔術」に登場する語。ローズマリ・エレン・グイリーはこの語を「意識のさまざまな平面」と推測している(『魔女と魔術の事典』青土社)。エノク的魔術は、旧約偽典エノク書との書誌学的な関係はないが、エノク書に登場する天使たちが用いたとされる「エノク語」なる謎の言語(暗号?)が用いられる。
 後代この魔術を復興したクロウリーの言を引いておく。
 《These Keys or Calls being rewritten backwards, there appeared conjurations in a language which they called "Enochian" or Angelic. 》
 《There are nineteen of these Keys: the first two conjuring the element called Spirit; the next sixteen invoke the four Elements, each subdivided into four; the nineteenth, by changing two names, may be used to invoke any one of what are called the thirty "Aethyrs" or "Aires". What these are is difficult to say. In one place we are told that they are "Dominion extending in ever widening circles without and beyond the Watch Towers of the Universe", these Watch Towers composing a cube of infinite magnitude. Elsewhere, we find that the names of the angels which govern them are contained in the Watch Towers themselves; but (most disconcerting disenchantment!) they are identified with various countries of the earth, Styria, Illyria, etc., as if aire simply meant clime. I have always maintained the first definition. I suspect Kelly of finding Dee unsupportable at times, with his pity, pedantry, credulity, respectability and lack of humour. I could understand that he broke out and made fun of the old man by spouting nonsense.》(The Confessions of Aleister Crowley, chapter 66)

アエテュル表
 ジョン・ディー博士が用いた暗号表か。D.ラングフォード「ジョン・ディー文書の解読」(『魔道書ネクロノミコン』学研)に、博士の「アエテュルの表」への言及がある。それぞれアルファベット三文字で現された三十の「アエテュル」を中心とする暗号体系。
 なお、『魔道書ネクロノミコン』は、ジョン・ディー博士の暗号書『ロガエスの書』を、ラヴクラフトの『ネクロノミコン』の原典とする立場(設定)で編まれている。

一切合切を打倒し破壊し、終焉させ得る絶対的な存在。
まさしく機械仕掛けの神(デウス・マキナ)
 ラテン語deus ex machina(英god from the machine)は、ギリシャ劇で、最後に舞台に降りてきて、強引に解決を付ける機械仕掛けの神を指す。

ティマイオスとクリティアス
 プラトンの対話篇『ティマイオス』『クリティアス』。一万二千年前に大西洋に沈んだ大陸、アトランティスへの言及がある。

大理不尽
 山口貴由『覚悟のススメ』に見える言葉。「待ち受けるは大理不尽!」

モニタ回復します
 敵の攻撃の余波で司令部のモニターが死に、主役メカがやられたと思われた状況でモニタ回復、すると主役メカが健在である……というシチュエーションは『宇宙戦艦ヤマト』に起源を遡ることができる。

ヒヒイロカネ
 日本古代の様子を記した古文書『竹内文書』記載の謎の金属。『竹内文書』は後世の偽書というのが定説。

アトランティス
 ギリシャ語「アトラスの娘」。この場合は、オカルティストの主張する、大西洋に一万二千年前に沈んだ伝説の大陸。プラトンが『ティマイオス』『クリティアス』において存在を語った。

開戦の狼煙だ!
 三浦建太郎『ベルセルク』(白泉社)13巻に、主人公ガッツが同様の雄叫びを挙げるシーンがある。

第4話 CHILD'S PLAY

愛すら感じる。いわゆる殺意混じりの
 板垣恵介の格闘マンガ『グラップラー刃牙』7巻か。「キサマのその克己心に愛すら感じる…!」と言った後で相手を殺してしまうくだりがある。

ショゴス Shoggoth
 H.P.ラヴクラフト『狂気の山脈にて』などに登場する不定形生物。

古えのもの Elder Things
 「旧支配者」(Old Ones)とも。H.P.ラヴクラフト『狂気の山脈にて』で語られる太古の知的種族。樽状の胴とヒトデのような頭を持つ。二十億年前に宇宙より飛来し南極で栄えた。

ダンセイニ Dunsany
 アイルランド貴族にして幻想作家のロード・ダンセイニ。『ペガーナの神々』(ハヤカワFT文庫、絶版)、『妖精族のむすめ』(ちくま文庫、絶版)など。H.P.ラヴクラフトはこの作家を敬愛した。

てけり・り Tekeli-li!
 E.A.ポオ『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(『ポオ小説全集2』創元推理文庫)以来、南極と「テケリ・リ!」という謎の鳴き声(?)を結びつける作品はいくつかある。H.P.ラヴクラフト『狂気の山脈にて』もその一例である。

物体X The Thing
 J.W.キャンベルJr.の小説『影が行く』を映画化した『遊星よりの物体X』、『遊星からの物体X』から。十万年前に南極に飛来した宇宙からの怪物の恐怖を描く。怪物は自由な姿をとることができるが、映画ではグロテスクな姿が印象的。
 ジョン・カーペンター監督はラヴクラフトの『狂気の山脈にて』を念頭に置き「物体X」はショゴスをイメージして撮った、という噂がある。

何か発動してはマズイっぽいもの発動。たった一つの星に捨てられそうなの
 TVアニメ『伝説巨神イデオン』。エンディング曲は「たった一つの星に捨てられ」と歌い出される。「イデ」なる力が発動すると、全ては因果地平の彼方に吹き飛ばされるという。ほかに映画『THE IDEON 発動篇』。

CHILD'S PLAY
 ホラー映画『チャイルドプレイ』からか。殺人鬼の霊魂が乗り移った人形が動き出し凶行を繰返す。

稲田
 ニトロプラスの作品には必ず登場する脇役。

チアキ
 クトゥルー神話の愛好者として有名な脚本家、小中千昭からか。

マコト
 小説家の「出海まこと」からか。『邪神ハンター』(青心社文庫)、『シャドウプリム』(電撃文庫)で、クトゥルー神話に材をとっている。

ソーニャ
 H.P.ラヴクラフトの妻となったロシア系ユダヤ人、ソーニャ・ハフト・グリーンからか。
 《ラブクラフトの友人サムエル・ラヴマンに言わせれば、これまで会ったなかで最も美しく、またやさしい女性」だったが、意志が強く、野心的で、「二秒と口をつぐんでいられなかった」ようでもある。》(創元推理文庫『ラヴクラフト全集5』解説))

人間失格
 太宰治『人間失格』。

両生動物のクソを掻き集めただけの価値すら無い
 映画『フルメタル・ジャケット』からとられたセリフ。鬼軍曹ハートマン曰く、
 《「貴様ら雌豚どもが俺の訓練に生き残れたら――― 各人が兵器となる 戦争に祈りを捧げる死の司祭だ その日まではウジ虫だ! 地球上で最下等の生命体だ 貴様らは人間ではない 両生動物のクソをかき集めた値打ちしかない!!」》

怪人赤マント
 昭和初期の都市伝説。子供が夕暮れまで遊んでいると、この怪人にさらわれるといわれた。

不思議の国に迷い込んだ女の子の話
鏡の国のお話
 ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』のこと。

ニトクリスの鏡 The Mirror of Nitocris
 ブライアン・ラムレイ『ニトクリスの鏡』(『タイタス・クロウの事件簿』創元推理文庫)から。ニトクリスはエジプト第六王朝の実在の女王。ニトクリスについてはラヴクラフト『ファラオと共に幽閉されて』 (『定本ラヴクラフト全集2』国書刊行会)で言及されており、ラムレイはそこから材をとったと思われる。

紅茶 tea
 「帽子屋」は、『不思議の国のアリス』の「気違いお茶会」のメンバー。他のシーンでも常にティーカップ片手に登場する。

トランプの嵐
 『不思議の国のアリス』のラストシーン。

御伽噺(エヴリデイ・マジック) Everyday Magic
 「エヴリデイ・マジック」は文藝用語。ファンタジーの一ジャンルで、『砂の妖精』や『メリー・ポピンズ』を代表とする、現代人の日常世界に魔法を持ち込むような作品群をいう。

遅刻ウサギ White Rabbit
 『不思議の国のアリス』冒頭には、懐中時計を持ち、遅刻しそうになって慌てて走るウサギが登場する。
 以下はうしとらさんの「デモンベイン 元ネタ集」より引用。
《ちなみにここに出てくるウサギは「アリス」そのまんまではなく、ボーパルバニーではないかと。元は「モンティパイソン・ホリーグレイル」に登場、後に「Wizardry」にも登場した、首ちょんぱウサギである(笑)》。
ハンプティ・ダンプティ Humpty-Dumpty
 「ずんぐり・むっくり」。童謡集『マザー・グース』に登場する謎かけで、答は卵。『鏡の国のアリス』には擬人化された姿で登場する。
チェシャ猫 Cheshire cat
 『不思議の国のアリス』に登場する、いつもにやにや笑っている奇妙な猫。姿が消えてもにやにや笑いだけがその場に残る。「チェシャイア州の猫のようにニヤニヤ笑う(grin like a Cheshire cat)」という慣用句がもとになっている。
イカレ帽子屋 Mad Hatter
 『不思議の国のアリス』に登場する人物名。成句「(as)mad as a hatter(まったく気が狂って)」がもと。昔の帽子屋は、フェルトを精製する過程で水銀を用いたため、気が狂った者がいたから、という説がある。
トランプの兵隊
 『不思議の国のアリス』に登場する。
グリフォン Gryphon
 ギリシャ神話の怪物。鷲の頭と翼、ライオンの胴体を持つ。『不思議の国のアリス』にも登場した。
にせウミガメ Mock Turtle
 『不思議の国のアリス』に登場。涙を流しながら身の上話をする。turtle soupの代用品mock turtle soup(牛などを材料とする海亀風スープ)から発想されたキャラクター。

ジャバウォック Jabberwock  
 『鏡の国のアリス』でアリスが読む詩「ジャバウォッキー」に登場する謎の生物。これを「竜」とするのは、詩の内容が竜退治めいているためか、ジョン・テニエルによる挿絵(ルイス・キャロル公認)の影響だろう。

こんなところに最終ボスが!? と言うか、我輩はいつの間に勇者の使命を負ったのであるか!?
 ドラゴンがRPGの最終ボスというイメージを定着させたのは、ファミコンのRPG『ドラゴンクエスト』か。「勇者」は多くのファンタジーRPGにおいて、主人公に与えられる制度的な称号。

レッツ・ドラゴンスレイヤー!
 「ドラゴンスレイヤー」は「竜殺し」。ファルコムに同名のRPGがある。

大人しく我輩の経験値となれぃ!
 アリスソフトのRPG『ランス』シリーズに同様のセリフがあると聞くが、未確認。『ランス』では、RPGのさまざまな制度(システム)が皮肉られることが多い。

業火を伴う灼熱の吐息
 ドラゴンは口から炎を吐く、と伝えられるが起源は不明。ちなみに九郎も言うように、「ジャバウォッキー」にこのような描写はない。

剣指
 人差し指と中指。また、その二本を揃えて立て、残りの三指を握った手の状態(じゃんけんのチョキの人差し指と中指を揃えた形)。

てわずびーりりり…… Twas brilling....
 『鏡の国のアリス』の詩「ジャバウォッキー」の原文冒頭から。この作品のジャバウォックの鳴き声はすべて「ジャバウォッキー」の原文の綴りをもとにしているようである。以下、対照一覧。

 てわずびーりりり、あいがんどすへするあいすわいとおびぃーえすっっ!
 Twas brilling, and the slithy toves
 でーあいぎいれあんでぐあいむびーれ、あいんすえあびぃぃぃぃ!
 Did gyre and gible in the wabe:
 あるるむあいむうえれすへぼろごぶぇさんですえむおーめらすそーうとぐるあべべべべべべべべべべべべべべべべ!
 All mimsy were the borogoves,
 And the mome raths outgrabe.
 おぉぉねっとわっ! おぉぉねっとわっ! えいんどすろうぐはんどすろうぐふっっっっっ!
 One, two! One, two! And through and through
 こめとむやるむすめやべあみしぼおわぃ、おおぉぉぉふらぼじょーあすどあい! かるるおぉぉぉ──っ! かるるあうぃぃぃぃぃ!
 Come to my arms, my beamish boy!
 O frabjous day! Callooh! Callay!
 てぃへぶぉるぱるびーるあべうぃーえんとすにしーけるすんちっくく!?
 The vorpal blade went snicker-snick!  

 なお、「ジャバウォッキー」の原文は「翻訳工房アリス」を参考にした。また参考のため、付2に原文と訳文を掲載した。
 
マウント・ポジション
 相手を馬乗りに押さえつける体勢。90年代以降グレイシー柔術とともに広まった思想で、一対一の徒手挌闘において、圧倒的に有利な体勢であるという。

不気味に脈打つ肉の触手
 こちらの描写の方がラムレイの『ニトクリスの鏡』に近い。

殴る。/殴る。/殴る。/殴る。
 夢枕獏『餓狼伝』には「殴った。」と一行ずつ書いていく手法が見られるが、本作の場合、マウスのクリックとそれに伴い現れる文字、という表現によりいっそう効果的といえる。

ジュブジュブ鳥 Jubjub bird
 「ジャバウォッキー」に登場する鳥。『スナーク狩り』にも登場する。

バンダスナッチ Bandersnatch
 「ジャバウォッキー」に登場する生物『鏡の国のアリス』の他の場所でも言及がある。『スナーク狩り』にも登場する。

第5話 I, ROBOT

エルザ Elsa
 映画『フランケンシュタインの花嫁』で人造人間役を演じたエルザ・ランチェスターからか。ちなみに、この話の冒頭は映画『フランケンシュタイン』のパロディになっている。

I,ROBOT
 アイザック・アシモフ『われはロボット』(ハヤカワ文庫)の原題。人類とロボットの歴史を描く連作短篇。

ダウジング
 占い棒やペンデュラムなどにより、地中の水脈・鉱物等を探知する魔術。古代のエジプトや中国から現代に至るまで広く用いられる。中国では「フーチ」。

ニグラス亭のジンギスカン定食
 シュブ=ニグラスは、H.P.ラヴクラフト『闇に囁くもの』(『ラヴクラフト全集1』創元推理文庫)などで、「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」と称される邪神。「ジンギスカン」は羊肉を用いた焼肉料理で、北海道の名物となっている。羊は偶蹄目反芻亜目ウシ科ヤギ亜科ヤギ族ヒツジ属、山羊はヤギ属であり、分類上きわめて近い。

皆の者、であえ! Search and destroy!
 曲者に侵入された際の号令。時代劇(たとえば『桃太郎侍』)において、主人公に邸内に侵入された悪代官が用いるせりふの定番である。

イ────ッ!
 特撮『仮面ライダー』の悪の組織ショッカーの戦闘員が発する雄叫び。

愛と正義の魔法探偵
 アニメ『美少女戦士セーラームーン』に、「愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラムーン! 月にかわっておしおきよ」という口上がある。また、アニメ『ナースエンジェルりりかSOS』の前期エンディング曲「りりかSOS」(秋元康作詞)にも「愛と正義のナースエンジェル」というフレーズがある。

男子三日会わざればアテンションプリーズ 士別三日、即當刮目相待
 「士別れて三日なれば、すなわち當に刮目して相待つべし」。「男子三日会わざれば刮目して見よ」などと訳される。『三国志』で有名な呂蒙の言葉で、『呉志』呂蒙伝注江表伝、または『十八史略』に見える。

2枚のマギウス・ウィングを巨大な拳の形に変えて
 三浦建太郎『ベルセルク』(白泉社)のモズグズが同様の技を用いる。

ピヨってる
 カプコンの対戦型挌闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズでは、プレイヤーキャラが単位時間あたり一定以上のダメージを負うと操作不能になり、「ピヨピヨ」という擬音とともに、立ったままフラついているキャラクターの頭部の周りをヒヨコが舞う。これを「ピヨる」と称する起源は定かではないが、新声社の雑誌『ゲーメスト』にはこの表現が普通に見られた。
 なお、後発の挌闘ゲームにも同様の趣向が取り入れられ、特にヒヨコが舞うわけでなくとも(たとえばSNKの「ワールドヒーローズ」シリーズではヒヨコのかわりに星が舞った)、同様の状態を「ピヨる」と呼ぶのが慣例となっている。

バルザイ Barzai
 ウルタールの賢人バルザイ。H.P.ラヴクラフト『蕃神』に登場する。

バルザイの偃月刀の製法
 「『ネクロノミコン』断章」(『魔道書ネクロノミコン』学研)、「バルザイの偃月刀の製作」。上記の賢人バルザイとの関係は不明。ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて』でランドルフ・カーターが偃月刀を持つが、こちらも関係は不明である。

アイザック・アシモフ Issac Asimov
 ロシア生まれのアメリカ作家で、SF界を代表する書き手の一人。著書はSF『われはロボット』『夜来たる』『ファウンデーション』『鋼鉄都市』(ハヤカワ文庫)、ミステリ『黒後家蜘蛛の会』(創元推理文庫)など多数。ロボット物の著作は、割合としてはけっして多くはないが、後世への影響は絶大。

世界を滅ぼし尽くして革ジャン着たモヒカンの悪党がチェーン振り回して暴れまわるような未来
 映画『マッドマックス』ないし漫画『北斗の拳』(武論尊・原哲夫、集英社)で描かれるような世界。

マイ・フェア・レディー My Fair Lady
 映画『マイ・フェア・レディ』。
エルザー、カムバッークッ!
 西部劇『シェーン』のラスト、夕陽の地平線へと去りゆくシェーンに「シェーン、カムバーック!」と叫ぶシーンはあまりに有名である。

ロボット三原則 Three Laws of Robotics
 アイザック・アシモフと編集者J.W.キャンベルの話し合いにより生まれた、ロボットの行動を律する原則で、『われはロボット』(ハヤカワ文庫)の最初などに記載されている。アシモフのロボット物の中核をなすアイデア。

ロボット工学の三原則 (小尾芙佐訳)

第一条
 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第1条に反する場合は、この限りでない。
第三条
 ロボットは、前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

――ロボット工学ハンドブック、 第56版、西暦2058年

 なお、正確には「ロボット工学の三原則」だが、石ノ森章太郎『人造人間キカイダー』等をはじめ、「ロボット三原則」と言及されることが多い。

街角の映画予告
 街角のシーンにあったポスターは、ニトロプラス『Phantom』PS版のポスター。

我、埋葬にあたわず(Dig Me No Grave)
 ロバート・E・ハワード『黒の碑』(創元推理文庫)所収の短篇『われ埋葬にあたわず』から。

カムヒアァァァァァァァ!
 ロボットアニメ『無敵鋼人ダイターン3』から。主人公、波嵐万丈の「ダイターン、カム・ヒア!」の声に応え、巨大ロボット・ダイターン3(正しくは三形態に変形可能なメカで、ロボットの形態もとれる)は、地上のいかなる場所にも三秒以内にやって来る。

全体的に黄色がかっておる
 子供向け番組において、ニセモノは一目でそれとわかるようにカラーリングが異なっている。その際黄色はワンポイントの指標となることが多い。特撮『仮面ライダー』に登場するショッカーライダー1号は黄色いマフラーをしている。
 なお、今回のそれは、正確にはニセモノではなく類似品である。

デモンベインが二体
 『鉄人28号』のにせ鉄人、『マジンガーZ』のにせマジンガーなどはいずれも、主役ロボとのすり替えを目論むものだった。このパターンを打ち破り、主役メカと互角に戦うための互角の性能を、というコンセプトを打ち出したのが『戦国魔神ゴーショーグン』である。23話「暴走グッドサンダー」に登場の敵ロボット「戦国恐神ゴーナグール」は、主役ロボ・ゴーショーグンを可能な限り再現した機体であった。

びええええええええ!
 このグラフィっクのDr.ウェストの涙の形は、アニメ『いなかっぺ大将』以降に広まったものか。

第6話 THE INVADERS

THE INVADERS
 ヘンリィ・カットナー『侵入者』(『クトゥルー8』青心社文庫)。

トラトラトラ Tora! Tora! Tora!
 日本軍の暗号電文。1941年、日本軍はハワイ真珠湾の米軍へと奇襲攻撃をかけた。「トラ、トラ、トラ」その成功を意味する。《「オアフ島上空、敵機なし。トラ、トラ、トラや」》(『トラ・トラ・トラ!』リチャード・O・フライシャー/深作欣二、70年、米)。

敗北主義の逃走兵ども
 《「敗北主義の逃走兵達を街灯上に吊し上げていく様などはもうたまらない」》(平野耕太『ヘルシング』4巻、少年画報社)。

『悔い改める一人の罪人については、悔い改める必要のない99人の正しい人についてよりも大きな喜びが天にある』
 新約聖書ルカ伝15章7節。

ティトゥス Titus
 ローマ帝国皇帝ティトゥス(39〜81、位79〜81)。先帝ウェスパシアヌスの長男で、善政を敷き人望もあつかったが、帝位について二年で死んだ。ちなみに有名なポンペイ埋没は、彼の治世のあいだの出来事である。
 ブラックロッジの幹部アンチクロスには、ローマ帝国の初代から七代までの皇帝の名がつけられている。「七つの頭」「マスターテリオン」の項を参照。
ティベリウスTiberius
 ローマ帝国皇帝ティベリウス(前42〜37、位14〜37)。アウグストゥス帝の後をついで即位した。有能な皇帝で、とりわけ人材活用にすぐれていたが、不人気で、また陰気だったという。タキトゥス『年代記』では何かと悪役に仕立て上げられている感がある。

汝の欲するところを行えDo what thou wilt.
 アレイスター・クロウリーの有名な言葉。彼のテレマ主義の教典『法の書』にある。クロウリーはこの言葉を、ラブレー『ガルガンチュワ』のテレームの僧院内の唯一の戒律からとった。なお、「thou」は古期英語「you」、「wilt」は「will」にそれぞれあたる
 《(……)誰かに強いられるということはなかった。そのように、ガルガンチュワがきめてしまったのである。一同の遵守すべき法規とは、ただ次の一項目だけだった。
欲するところを行え
 かく定められたゆえんのものは(……)》(『第一之書 ガルガンチュワ物語』第五十七章「テレミートたちはいかなる生活方針を定めて暮らしたか」、渡辺一夫訳)
 また『法の書』には次のようにある。
 《Do what thou wilt shall be the whole of the Law.》(The Book of the Law, I,40)、《There is no law beyond Do what thou wilt.》(III,60)

妖蛆の秘密(デ・ウェルミス・ミステリイス) De Vermis Mysteriis
 1935年、若きロバート・ブロックがラヴクラフト宛てに書き送った『星から訪れたもの』(『クトゥルー7』青心社文庫)に登場する書物。作品内に登場するのはThe Mysteries of the Wormだが、その原著としてDe Vermis Mysteriisの名が挙げられる。
 また、翌年発表されたラヴクラフトの『時間からの影』、及び『星から訪れたもの』への返礼として書かれた『闇をさまようもの』には、De Vermis Mysteriisの題で登場している。

ベルゼビュート Belzebuth
 ベルゼバブ、ベルゼブルとも。「蝿の王」の意。「ベルゼビュート」はフランス語読みか。もとはパレスチナで信仰された異教の神だが、キリスト教では堕天使にして魔王。また、キリスト教の「七つの大罪」のうち「暴食」を司るとされる。

バッド・トリップ・ワイン
 不明。ブライアン・ラムレイ『妖蛆の王』(『タイタス・クロウの事件簿』創元推理文庫)に登場する中毒性のワインからか。

水銀の血
 不明。

クトゥグア Cthugha
 オーガスト・ダーレス『闇に棲みつくもの』(『クトゥルー4』青心社文庫)に登場する邪神。現在はフォーマルハウトにいるとされる。

旧支配者 Old Ones, Great Old Ones, Elder Things
 クトゥルー神話において、人類より以前に地球を支配していたものども。邪神を指すこともあれば、特定の種族について言うこともある。ここでは邪神をさす。

ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと……  h'nglui mglw'nafh Cthugha Fomalhaut....
 オーガスト・ダーレス『闇に棲みつくもの』に登場する、クトゥグアをフォーマルハウトから召喚する呪文。

第7話 THE SHADOW OVER INSMOUTH

THE SHADOW OVER INSMOUTH
 H.P.ラヴクラフト『インスマウスの影』の原題The Shadow Over Innsmouthから。Nがひとつ脱落しているのは、さすがに遠慮したのかもしれない。

インスマウス Insmouth
 H.P.ラヴクラフト『インスマウスの影』の舞台となるアメリカの陰鬱な漁村Innsmouthから。

正気度 SANity
 アメリカ発祥のテーブルトークRPG『クトゥルフの呼び声』に用いられる値。日本版では「SAN値」。これを失うとプレイヤーキャラは「発狂」扱いとなる。

スーパーウェスト中略28號GR2
 「GR2」(=ジャイアントロボ2号)は特撮『ジャイアントロボ』(横山光輝原作)に登場する水中用の巨大ロボット。ただし作家が直接参照したのは、今川泰弘監督によるOVA版と思われる。

さあ、愛を取り戻すのである
 アニメ『北斗の拳』の最初期の主題歌「愛をとりもどせ!」(クリスタルキング)から。

元気にハッスルハッスルぅ hustle
 「ハッスル」は昭和30年代末期の流行語で、上記のように使われた。ちなみに「ドンマイ」(Don't mind.)は昭和20年代に流行。

ギルマン・ハウス Gilman House
 H.P.ラヴクラフト『インスマウスの影』において主人公が宿泊する、漁村インスマウス唯一の宿泊施設の名。

その神とやらは? 蛸か? それとも半人半魚の方か?
 クトゥルーは蛸(槍烏賊とも)のような頭部を持つといわれる。また、ダゴンは半人半魚の姿で信仰される神。H.P.ラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』『ダゴン』参照。

──人間(ヒューマン)ッ!
 平野耕大の漫画『ヘルシング』(少年画報社)の有名なセリフから。「ぶち殺すぞ 人間(ヒューマン)!」

ホームズ Holmes
 英国のサー・アーサー・コナン・ドイルの創出した名探偵、シャーロック・ホームズのこと。「(名)探偵」の代名詞。

家畜を見るような、出荷される前の豚を見るような
 《あの女の目……養豚場のブタでもみるかのように冷たい目だ 残酷な目だ……「かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」ってかんじの!》(荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』第二部、集英社)。

敵に塩を送ってやるのであるっ! アイム・ケンシン・ウエスギ!
 戦国時代、甲斐の武将武田信玄が駿河からの塩の輸入を止められ困窮した時、ライバルの上杉謙信が塩を送った、という伝説がある。

唸りをあげるギターの弦
 ここでドクターが演奏しているのは、ニトロプラス『吸血殲鬼ヴェドゴニア』の主題歌「WHITE NIGHT」。

自由を!さもなくば死を! Give Me Liberty or Give Me Death!
 アメリカ独立運動の指導者、パトリック・ヘンリーの有名な演説から。

レミングス lemmings
 タビネズミ。北欧や北米に生息するネズミ科の小動物。増殖し、餌が確保できなくなると、海へ飛び込んで集団自殺を行い個体数の調整を行う、という俗説(実際には誤り)がある。

ふんぐるい むぐるうなふ くするふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn.
 H.P.ラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』に登場する、邪神Cthulhuの信徒が唱える呪文。"In his house at R'lyeh dead Cthulhu waits dreaming."の意だという。大瀧啓裕による「死せるクトゥルーはルルイエの館にて夢見のままに待ちいたり」の訳が有名。

深きものども(ディープ・ワンズ) Deep Ones
 アルの説明の通り。H.P.ラヴクラフト『インスマウスの影』に登場する。

落とし子 Cthulhu spawn
 「クトゥルーの落とし子」か。太古の地球にクトゥルーとともに飛来したその眷属。H.P.ラヴクラフト『狂気の山脈にて』に言及がある。

くぅ〜りとぉ〜りとぉおふ〜 Cthulhu
 Cthulhuは「ク・リトル・リトル」と発音する、との説があり、国書刊行会『ク・リトル・リトル神話大系』の題のもととなっている。

ルルイエ異本 R'lyeh Text
 おそらくはオーガスト・ダーレスの創作による書物。『ハスターの帰還』(『クトゥルー1』青心社文庫)などに登場。なお、ラヴクラフトのテクストにはこの書物の名は見えない(ダーレスとの合作は除く)。
 ルルイエ異本の精が中国風の衣裳を着ているのは、原本が中国の夏王朝で書かれたという説によったためか、あるいは中国語版(存在するといわれる)であるためか。

るうううぅぅ・りぃぃええええええええ R'lyeh
 ルルイエ(R'lyeh)は「ル・リエー」とも訳される。

オトー Otho
 ネロ帝没落に際し、68年〜69年のあいだに相次いで立った三人のローマ皇帝(ガルバ、オトー、ウィテリウス)の一人。この混乱を収拾しフラヴィウス朝を樹てたのがウェスパシアヌス帝である。

いくい・どろしゅ・おどふくろんく
 こちらをどうぞ

ダゴン Dagon
 H.P.ラヴクラフト『インスマウスの影』『ダゴン』に登場する半人半魚の神。深きものどもに崇拝される。
 古代パレスティナ(ペリシテ)のフェニキア人に実際に崇拝された神で、旧約聖書サムエル記上および士師記に言及がある。なお、ゲーム本編「ペルシテ」はペリシテの誤記と思われる。

ら! ら!
 菊池秀行『妖神グルメ』(ソノラマ文庫ネクスト)96頁にある。

ガルバ Galva
 「オトー」の項を参照。

第4の結印は『旧き印』。脅威と敵意を祓うもの也
 《第四の結印は旧神の印である。夜に諸力を招喚する者を守り、脅威と敵意の力を祓う。》(「『ネクロノミコン』断章」xxiii頁、『魔道書ネクロノミコン』学研)。左手の親指と小指の先を合わせ、残りの三本の指を真っ直ぐ立てた形の印を結ぶ。同書にはこの印の「別の形」として、五芒星形の紋章「旧神の印」(ゲーム本編で使用されているものとは形が異なる)とそれを刻んだ護符の製法が紹介されている。
 『旧き印』はのちに「エルダー・サイン」とルビが振られている。
 《わが世界を越える広大な宇宙のなかには、ものを捕え、ものを束縛してしまう暗黒の存在が息づいている。闇のなかを盲のごとく這いずるもの、〈太古のしるし(エルダー・サイン)〉に反逆せるもの(……)》(H.P.ラヴクラフト『銀の鍵の門を越えて』、荒俣宏訳)
 旧神Elder Godはオーガスト・ダーレスの創造によるもので、『永劫の探求』(『クトゥルー2』青心社文庫)によれば、邪神(旧支配者)と戦い、これを封印した存在。「旧神の印」は邪神の封印に用いられる。
 なお、ゲーム本編で用いられる「先の欠けた五芒星形」はH.P.ラヴクラフト『狂気の山脈にて』で南極調査隊が発見した紋様(ただしラヴクラフトの作品ではエルダー・サインとはおそらく無関係)をもとにしているのかもしれない。
えいるえいずいぃふ? Al Azif?
 「アル・アジフ?」。おそらくこのときルルイエ異本の少女は、自身に切りかかる九郎の肩に、アルの姿を認めたのだろう。

緑色の水となって
 H.P.ラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』では、ルルイエは「緑色の粘液がしたたる石の都」(宇野利康訳)として夢の中に現れる。

ヒュドラ Hydra
 やはりH.P.ラヴクラフト『インスマウスの影』に、アルの説明の通りの言及がある。ギリシャ神話のヒュドラとの関係は不明。

水銀(アゾート)の血
 不明。アゾートAzothは錬金術でいう水銀。

る・る・らー……くとはうたはう
 不明。「R'lyeh....Cthulhu」か。後半はむしろCthuthuか。ちなみに、Cthulhuをどう発音するかは諸説あり、邦訳に際し「クルウルウ」「ク・リトル・リトル」等の表記が採用される場合がある。この場合はthuがlhuと同一視されていることになる。ならばClhulhuないしCthuthuとするのが妥当ではないか、という発想があるのかもしれない。

果て知らぬ永劫。
計り知れざる永劫。
怪異なる永劫。

 アルハザードの二行聯句(「That is not dead〜」の項を参照)、「That is not dead which can eternal lie/And with strange aeons even death may die.」の日本語訳にはさまざまなものがある。ここでは「strange eons」の部分の三種類の訳がもとになっている。「果て知らぬ永劫」は宇野利泰訳(「果て知らぬ時ののち」)、「計り知れざる永劫」は大瀧啓裕訳(「測り知れざる永劫」)のそれぞれ変形、「怪異なる永劫」は波津博明訳の通り。

門の鍵の子らを止めた賢者
 H.P.ラヴクラフト『ダンウィッチの怪』のヘンリー・アーミティジか。
セラエノの知識を駆る盲目の賢者
 オーガスト・ダーレス『永劫の探求』(『クトゥルー2』青心社文庫)で活躍するラバン・シュリュズベリィ博士か。ヒヤデス(プレアデス)星団はセラエノの大図書館で禁断の知識を学び、地球では邪神の復活を沮止するために奔走した。
人類が生み出した対邪神組織
 ブライアン・ラムレイの〈タイタス・クロウ〉シリーズに登場する対邪神組織、〈ウィルマース・ファウンデーション〉か。『タイタス・クロウの事件簿』(創元推理文庫)巻末の作品紹介に言及がある。

第8話 THE THNG THAT WALKED ON THE WIND

THE THNG THAT WALKED ON THE WIND
 オーガスト・ダーレス『風に乗りて歩むもの』(『クトゥルー4』青心社文庫)原題。

燃える眸が、白い闇に浮かび上がる
 以下「雲のような靄に包まれた、巨人の姿。ヒト型の雲に、燃える眸が星のように爛々と輝いている。」まで、上記作品ほかイタクァ登場の際には同種の描写がなされる。なお、竜の姿(及びクトゥグアのとる獣の姿)はこのゲームのオリジナル。

イタクァ Ithaqua
 オーガスト・ダーレスの創造した邪神。『風に乗りて歩むもの』等に登場する。

ウェンディゴ Wendigo
 カナダの雪男。人食い。また、人間に憑き、内臓を氷と変え、人肉食いの怪物へと変えるという。TRAM FRAGMENTSの「ウェンディゴ憑き」に詳しい。

ヴィヴルニアとゴスが地獄のような言語道断の悲劇的な結婚を
 H.P.ラヴクラフトの書翰(モートン宛1933年)にある邪神の系図から。大瀧啓裕『邪神の系譜学』(『クトゥルー5』青心社文庫)などに掲載。

火と風──
 いわゆる「クトゥルー神話」の成立は、H.P.ラヴクラフトの死後、オーガスト・ダーレスによるものである。その際にダーレスは、さまざまな邪神を地水火風の四大元素に分類し創造、もしくは以前からラヴクラフトの作品に登場した邪神を、地水火風それぞれの属性に遡行的に振り分けた。





参考文献







付・体験版におけるレムリア・インパクト

 『PUSH!』2003年5月号等の雑誌付録CDには、第1話ほぼそのままの体験版が収録されていた。
 ゲーム本篇との最大の差は、レムリア・インパクトがムービーではなく文章と音楽と止め絵での表現だった点である。以下にその全文を掲載する。範囲は、ムービーのために画面が切り替わっている間に、正確に相当する。なお、音楽は、直前のシーンから切り替わらずにそのまま使われた。












マ「──デモンベイン・パイロットより第一近接昇華呪法、解凍要請来ました」
瑠「やりますわよ……ナアカル・コード送信!」
ソ「了解! ナアカル・コード送信! 術式、解凍!」

 ──刹那。
「……ッッ!? ぐぅぅああぁぁっ!」
 超々高密度に圧縮された魔術情報……ある一定の法則を以って構成された式、『術式』が俺の脳内を光の速度で駆け巡った。
 脳神経を電撃が根こそぎ嘗め尽くしていくような、そんな凄まじい衝撃の疾走と蹂躙!

ア「ほう…! これ程のものとは!」

 「アル……こいつはっ!?」

ア「案ずるな! 妾がついておる……この暴虐にして絢爛なる滅びの術式! 見事、制御してみせようぞ!

 「な……何を? …………っっっっ!?」
 術式は俺の脳内、体内のみならず、デモンベインの全体、魔術回路の隅々までを疾走する。
 より複雑に、より狂人に式を構築し、世界に新たなる宇宙の法則を──触れるものに必滅の結末をもたらす、暴君の如き絶対の(ロウ)を創造する!
 俺にはその過程の総てを認識することが出来た。
 そして──
 「───────!」
 術者と魔導書と機体の内を駆け巡る術式が、三者を繋いだ(リンク)
 その瞬間──
 情報の洪水と激流に引き裂かれそうだった躰と魂が、不意に軽くなった。
 視界が360度、世界の果てにまで拡大されたような感覚。
 意識が肉体の器から溢れ出し、世界に拡散してゆくような感覚。
 燃える。
 意識が燃え拡がっていく。
 そのくせ、その中枢は酷く冷めたくて、鋭くて、清浄だった。

 デモンベインは我が意に沿って動く。
 苛烈な爆炎の如き力を、流れる水の如き柔軟さで。
 術を、築くのだ。
 剣指を作って、印を結ぶ。
 デモンベインの光り輝く指が、夜闇を裂いて、宙に軌跡を刻んだ。
 軌跡は光と紋様となり、紋様が複雑になるにつれ、デモンベイン内部の各種機関が活動を加速させる。
 エンジン部が無限のエネルギーを汲み上げて、凶暴な咆吼を上げた。

 「うおおおおおおおおお!」
  重ね合わせた両腕を頭上に掲げた。
 拳から迸る光が荒れ狂う。
 そこから振り下ろした両腕を広げて、両足を踏ん張って身構えた。
 デモンベインの重量で大地が揺れ、周囲のビルが振動する。

 そして──光が爆裂した。

ウ「ぬおおおおおおおっ!? ……こ、これは……!?」

 デモンベインを包み込む光。
 後光の如く背負うは、夜に灼きつく魔法陣──五芒星形の印。

ア「即ち『旧き印(エルダー・サイン)』。邪悪なる力を退け、払う結印──」

 コクピット内をオーバーロードした魔力が蹂躙する。
 荒れ狂う力に苛まれながら、だが俺たちは意識の集中を途切れさせはしない。
 むしろ魔力はより鋭く、強靭に研ぎ澄まされてゆく。
 デモンベインの右掌を、天高く掲げた。
 「光射す世界に、汝ら闇黒、棲まう場所無し!」
 咆吼がアーカムシティを震撼させた。
 デモンベインの右掌に組み込まれた機関が、一撃必滅の威力を封じ込めた回路に、高密度の術式が疾走する。

ア「渇かず(かつ)えず、無に還れ──!」

 掌を前面に突き出した。
 迸る閃光は、街を白い闇に包み込む。
 白い闇の中、デモンベインが地を蹴った。

 爆発すら伴うかのような、強烈な踏み込み。
 デモンベインの巨体が、街を疾駆する──!

ウ「ぬおああああああああああああああああ───────っっっっ!」

 一瞬で、破壊ロボを間合いに捉える。
 右掌を振りかぶる。
 「レムリアァァァァァァ────ッ!」
 右掌の咆吼が最高潮に達した。
 咆吼(クライ)
 咆吼(クライ)
 咆吼(クライ)
 それは純然たる叫び。魔を断つ為の、滅ぼす為の、弔う為の、それは爆音が歌う破壊の咆吼(ウォークライ)
 空間を引き裂く光を靡かせ、吼える右掌は、吸い込まれるように破壊ロボに伸びる……!
 「インパクトォォォォォ──────ッ!」

 輝く掌が破壊ロボに押し付けられた。

ウ「……? な……」

 必滅の術式を流し込む。
 其れは猛毒のように、破壊ロボ内部に浸透する。
 侵略する。
 蹂躙する。
 陵辱する。
 そして
 そして
 そして──

ウ「なっ!? なななななななななな、なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

ア「──昇華!」
 世界は、閃光と沈黙の中に、閉ざされる。

 昇滅(・・)の劫火に、呑み込まれる。












付2・ジャバウォッキー

※岡田忠軒訳・角川文庫『鏡の国のアリス』16-18頁

    JABBERWOCKY  ※ジャバーウォックものがたり

'Twas brillig, and the slithy toves あぶりの時にトーヴしならか
 Did gyre and gimble in the wabe; まはるかの中に環動穿孔
All mimsy were the borogoves, すべて哀弱ぼろ鳥の群れ
 And the mome raths outgrabe. やからのラースぞ咆囀したる

'Beware the Jabberwock, my son 「ジャバーウォックにゆだんすな、子よ!
 The jaws that bite, the claws that catch! かみつくあごや、ひっかける爪!
Beware the Jubjub bird, and shun ジャブジャブ鳥に気をくばりつつ
 The frumious Bandersnatch!' バンダースナッチの怒りを避けよ!」

He took his vorpal sword in hand: 剣を手に取り長の年月
 Long time the manxome foe he sought-- 狂乱すごき敵をば求め──
So rested he by the Tumtum tree, ぽんぽんの木のかたえに休み
 And stood awhile in thought. しばしは立って思いに沈む

And as in uffish thought he stood, 思いせわしくたたずむときに
 The Jabberwock, with eyes of flame, ジャバーウォックは目を火と燃やし
Came whiffling through the tulgey wood, 厚い森ぬけ、ふうふううなり
 And burbled as it came! 飛んで来ながら、ぶくぶくという!

One, two! One, two! And through and through いちに! いちに! ぐっさりぐさり
 The vorpal blade went snicker-snack! きばもするどく切りこむ刃!
He left it dead, and with its head 死体は捨てて首だけ取って
 He went galumphing back. 意気ようようと走ってもどる。

'And has thou slain the Jabberwock? ジャバーウォックを殺して来たか?
 Come to my arms, my beamish boy! いざ、この腕に、ほおえむわが子!
O frabjous day! Callooh! Callay!' よいかな、この日! キャルウ! キャレイ!
 He chortled in his joy. 歓喜のあまりかんらと笑う

'Twas brillig, and the slithy toves あぶりの時にトーヴしならか
 Did gyre and gimble in the wabe; まはるかの中に環動穿孔
All mimsy were the borogoves, すべて哀弱ぼろ鳥の群
 And the mome raths outgrabe. やからのラースぞ咆囀したる